「ポジティブ・フィードバック」〜周囲も自分も幸せになるためのツール

 先日、国際エグゼティブコーチのヴィランティ牧野祝子氏の著書、『国際エグゼクティブコーチが教える人、組織が劇的に変わるポジティブフィードバック』を読みました。主に会社組織内で上司が部下に対してどのようにポジティブフィードバックをしていくか、その概論と具体的方法についてわかりやすい実例やエビデンスも交えて書かれています。その中で、ポジティブ・フィードバックは会社の上司と部下の関係のみならず、自分の周囲の大切な人たち(家族や友人など)にも応用が効くこと、また改めてフィードバックとは?ポジティブ・フィードバックとの違いは?などというところも含めて整理し、皆様と共有できればと思います。

そもそもフィードバックとは?

 精神科医で作家である樺沢紫苑氏は著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』の中でフィードバックとは、「アウトプットによって得られた結果を評価し、その結果を考慮して次のインプットに修正を加える作業のこと」と定義しています。具体的には(見直し、反省、改善、方向修正、微調整、原因究明)などはフィードバックです。つまり、フィードバックを行うことで行動が方向修正され、進歩・成長につながります。逆にいうと、フィードバックがないと、せっかくインプット、アウトプットをしても堂々巡りを繰り返すだけで成長にはつながらない、ということです。またヴィランティ牧野祝子氏は前述の著書で、「フィードバックをしないことはナビなしではじめての場所に向かうこと」と説明しています。こまめにフィードバックを行うことで次にどうすればよいか、が明確にになり、さらに効率的で質の高いインプット、アウトプットにつながるといえます。

ミレニアル世代はフィードバックを求めている!?

 社会心理学者のロン・フリードマン氏は「ミレニアル世代はフィードバックをもらうことに慣れており、無意識のうちに職場などでも求めている」ことを指摘しています。

ミレニアル世代やZ世代はそれ以前の世代と比較し日常的にSNS等でいいねやグッドボタンなどをもらうことでフィードバックをもらうことに慣れています。フィードバックの文化の素地ができていると言っても良いかもしれません。別の角度から見ると、いいねやグッドボタンが来ているかもしれない、という期待は脳内物質のドーパミンの分泌量を増やすため、スマートフォンが欠かせない昨今、よりフィードバックに敏感になっていると考えることもできるかもしれません。

フィードバックとポジティブ・フィードバックの違い

・フィードバック:

 フィードバックは人や組織に対する反応・意見・評価のことです。一般的に「できなかったこと」、「改善点にフォーカスするため、フィードバックを受ける相手が構えてしまったり、聞く耳を持たなかったりするため効果はイマイチです。また、「フィードバック=批判」と捉える人も少なくありません。

・ポジティブ・フィードバック:

 ポジティブ・フィードバックは、「成長のための相手への良質なコミュニケーション」です。相手の成長を第一の目的にしています。相手を信頼し、相手の(存在、行為、結果、可能性)を承認しそれを肯定的な言葉で伝えます。相手の「できること」「強み」にフォーカスします。そのため、ポジティブ・フィードバックを受けた相手は「大切に思われていること」を実感し、前向きに進んでいくことができます。

ポジティブ・フィードバックの基本は「信頼」すること

 ヴィランティ牧野祝子氏はポジティブフィードバックの基本は「信頼すること」であると述べています。ところで、普段から何気なく使っている言葉である「信頼」とは一体なんでしょうか。初代日本アドラー心理学会会長の野田俊作氏は信頼と信用の違いについて、信用は「信じてよい証拠があったときだけ信じること」、それに対して信頼は「信じてよい条件が全くなくても頭から信じること」と述べており、また「信じることは騙される覚悟、決断することである」とも述べています。つまり、信用は自分の期待、思惑をただ相手に押し付けているに他ならないのです。ただ、相手を信頼し続ける、そのメッセージをつたえることではじめて相手は大切に思われている、認められていると感じることができ、前向きになり、そして相手も自分を信頼してくれる(ラポールの形成)ことにつながります。

ポジティブ・フィードバックの効果

 ここからはポジティブフィードバックの効果について説明します。具体的には以下の通りです。

①やる気がUPする:

人は期待されると、その通りに成果を出す傾向にあります(ピグマリオン効果)。

②自信がUPする:

他者からポジティブフィードバックをされることで自分の「強み」、「得意なこと」が明確になり、自信につながります。

③人間関係がUPする:

繰り返しポジティブフィードバックをされること(接触回数が増える)で相手への好意や印象が高まります(ザイオンス効果)。

④仕事への理解度がUPする:

具体的に「何が」、「どう」良かったかポジティブフィードバックを受けることで、次にどう取り組めば良いかが分かるようになります。

⑤主体性がUPする:

ポジティブフィードバック(承認)の積み重ねによって「これでいいんだ」と認識ができ、主体性が増します。

⑥ドーパミンが分泌される:

幸福度UPのみならず、モチベーション、学習機能、集中力、記憶力などもUPします。

ポジティブ・フィードバック4つの基盤

 ここでは、ポジティブフィードバックに重要な4つの基盤を説明します。

①存在承認:

存在承認はずばり、「相手をリスペクトする」ことです。つまり、挨拶・いてくれて感謝する・相手を気にかける声かけなどのことです。その際に、笑顔・目線・声のトーンなどの非言語コミュニケーションも重要です。

②行為承認:

行為承認は結果の有無を問わずに相手が行ってくれていることを認めることです。行為承認によって、相手は今やっていることが間違っていない、と確認ができ、より良い結果につながります。

③結果承認:

結果承認は相手の「強み」、「得意」にフォーカスし、結果の出ていることを認めることです。

④可能性承認:

可能性承認はいわゆるネガティブ・フィードバックのことです。相手に改善してほしいことを伝えなければいけない場面において、重要になることとして、相手に「期待しているということ」「信頼していること」伝えることが重要です。またできなかった過去のことよりも、次はどうするか、という未来に目を向ける視点が重要です。

 ポジティブフィードバックは、「マズローの欲求五段階説」によるところの、承認欲求を充足します。反対にポジティブフィードバックがなければ、ナビがない、つまり不安になり次に何をすれば良いかわからず、安全の欲求が脅かされます。

ポジティブ・フィードバックでしてはいけないこと

①平等性がないこと:

一方の相手にはポジティブフィードバックをしているのに、一方の相手には怠っていると、その相手は自分には無関心である、認められていない、という気持ちが湧き、やる気、自信を失います。

②他者比較する:

これは自分自身においても全く意味のないことです。上方・下方比較は不幸になるだけです。その人自身の成長を「見ていること」、「認めていること」を伝えることが大切です。

③「嘘」をつく:

できていないことをできていると相手に伝えても、ポジティブフィードバックとしてはまったく意味を為しません。

ポジティブ・フィードバックの実践にあたってのポイント

さいごに、ポジティブフィードバック実践にあたっての要点をまとめます。

①頻度を高めて、短いスパンで定期的に行う:

ポジティブフィードバックの効果を最大限に出すには、相手がポジティブフィードバックを受け取る準備ができていることが重要です。はじめは、ポジティブフィードバックしすぎのくらいがちょうど良いと言われています。

②その場ですぐにフィードバックする:

相手のアウトプットに対して、すぐにフィードバックすることで相手のその後の良質なインプット、アウトプットにつながります。また素早いフィードバックは相手へのリスペクトを示すことにもなります。

③具体的に伝える:

特に可能性承認をする際には、どう思う?と相手に聞き、相手に答えを出してもらうことが理想的です。なぜなら、答えを自分で導き出したことで、より責任を持って次の行動を取ることができるからです。

④小さなことでも伝える:

小さなことであってもフィードバックすることが大切です。なぜなら、「小さなこと」というのはあくまでこちらの認識であって、相手にとっては「大きなこと」かもしれないからです。「できて当たり前」、「言わなくても察してほしい」などといったアナーキズム的な考え方は避けるようにします。特に察することや謙遜することが美徳とされるわたしたち日本人においてはなおさらです。

⑤非言語コミュニケーションを大切にする:

笑顔・目線・声のトーンもポジティブフィードバックにおいてはとても重要です。せっかく内容としては良いフィードバックができても肝心の表情や声のトーンが暗いと相手はそのメッセージをきちんと受け取ることができず台無しになってしまいます。

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