ニコラス・ダーバスの投資法「ボックス理論」について

 ニコラス・ダーバスはハンガリー生まれのダンサー、作家、投資家です。投資家として1950年代から70年代まで活動し彼が苦心惨憺、紆余曲折の末、「ボックス理論」を築き上げました。今回はその「ボックス理論」について書いていきたいと思います。

 ニコラス・ダーバスは1952年、当時ダンサーとして世界各地を転々としながらさまざまなショーに出演をしていました。そんな中、トロントのナイトクラブから出演の依頼が来ました。そしてそのクラブのオーナーから出演料を現金ではなく、株式で支払う、という提案を受けました。結局、ダーバスはそのショーへの出演は実現しなかったものの、出演が実現できなかった申し訳なさからお詫びにその株式を買い取りました。ダーバスはこの時、株式投資に関する知識はほとんど何も持ち合わせていませんでした。その後、その株(ブリランドというカナダの鉱山の株であった)のことは忘れていましたが、2ヶ月後に何気なく新聞の株式欄を見ると、株価は上昇し結果、8000ドル近い儲けを手にしました。そこからダーバスは株式市場にのめり込んでいきます。第2のブリランドのような上昇株を見つけるために彼はまず、ショーに出演しているナイトクラブに出入りしているお金持ちの人間達に良い株を知らないか片っ端から情報を集めました。そしてその通りに株を買いました。しかし結果は想像通り全くうまくいきません。その後もファンダメンタルズに従い、株を買うなど様々な方法を試行錯誤しますがうまくいきません。ブリランド株で儲けたお金は日に日に目減りしていきました。

 そんな中、彼は個別銘柄のチャートの動きを片っ端からチェックし研究をし始めました。そして研究をしているうちに、株は磁石に引き寄せられるように上あるいは下に向かってトレンドを描くこと、ひとたびトレンドが形成されればそのトレンドは持続する傾向があることに気が付きました。そのトレンドは一連のフレームの中で動いておりこのフレームのことをボックス(箱)と呼ぶようになりました。そしてその後も試行錯誤を繰り返し苦心惨憺、紆余曲折を経て、損切り(自動ストップロス)なども考え出し、「ボックス理論」を築き上げました。

 ここからは具体的な「ボックス理論」の投資法の原理・原則についてまとめていきます。

ダーバスシステムの基本原則

ボックス理論の前に、ダーバスの投資の基本原則を紹介します。基本原則は2つあり、それは、

1.例外的な状況を除けば、新しく発展している業界の会社、成長と収益の見通しが非常に良い会社の株しか買わない

2.活況な銘柄を見つけても、まずは市場全般の動向を調べて、市場が上昇トレンドか確認、その次にその銘柄が株式市場で他の業界よりも堅調かどうか確認する

以上の2点です。ダーバスはこれら2つの点に合致した時だけ、その銘柄をさらに詳しく調べました。ダーバスは銘柄の前にまず株式市場の市況が良いかどうかをまず見極めるようにし、弱気相場では投資を避けました。市場環境が投資に相応しい状況で、かつ投資する銘柄の業界も適切と判断できたらその銘柄の株価が上昇基調であること、またその上昇に際し出来高も伴っていることを確認しました。そうしてようやく銘柄を買う準備は整います。

「ボックス理論」のおさらいですが、株価の値動きは(もちろん、一方方向に上げ下げするものもありますが)一見すると、不規則なように見えても、実際には一定の値幅(抵抗線と支持線)を行ったり来たりして、ボックスを形成するようにして動いているものもあります。そして株価はいずれボックスの領域から飛び出すこと、株価の上昇あるいは下落は全体の動きとして、ボックスからボックスへの動きで成り立っていることにダーバスは気付きました。

株を買うのにふさわしい瞬間

 株を買うタイミングについてですが、ここからは実際の実例を示しながら説明をしていきます。

 株を買うタイミングですが、ダーバスは株価がボックス内の天井をブレイクアウトして、新高値水準に入り、一旦反落したあと、最初の上抜けでつけた高値を超えた新高値をつけた時を買うにふさわしい瞬間として説明しています。上の図の例で言えば、①のボックスを上抜けし②の新高値圏に入った矢印の瞬間です。この理由として、ダーバスは新しいボックス圏に株価が上抜けした後、すぐに大量の売りが出て、再び前のボックス圏に戻ることがある習性があることを指摘しています。この背景には抵抗線の上抜けはチャートを見て動くトレーダーたちにとって買いシグナルであることをプロのトレーダーやフロアトレーダーは知っており、その機会に乗じ空売りを仕掛けることがあると説明しています。また、買い増しのタイミングとしてダーバスは新しく形成されたボックスをさらに上抜けした際に1回目の買いタイミング同様に注文を入れています。

売りのタイミング、安全ネットとしてのストップロス注文

 ダーバスは株式を買うと同時にストップロス注文を徹底しました。ボックスの底(支持線)を下に抜けた場合、下に新しいボックスが形成される前にどこまで下げるのかは分からないため、ボックスの底を全てを手仕舞う明確な水準としました。また上がりすぎた銘柄に関しては例外的によりタイトに損切りラインを設定することもありました。これにより株の売却時、そこに一切の感情が入ることなく、持株を長く持ちすぎて含み益を全て失うことを防ぐことや、持株が急落した場合の大きな損を最小限にすることができました。

 以上がニコラス・ダーバスの投資法「ボックス理論」についての説明でした。これは現代でも十分に通用する投資法です。また投資法のみならず、ダーバスの失敗を繰り返しながら試行錯誤し自らの投資理論を築き上げていくプロセス、姿勢はとても重要で参考になるのではないでしょうか。