マルチプル・コントラクションとは 

 2022年1月3日に行われたじっちゃまこと、広瀬隆雄さんのYouTubeライブで今は米国株(とりわけグロース株)にマルチプル・コントラクションが起きている、という話題を解説されていました。そこで、今回はマルチプル・コントラクションについてまとめてみたいと思います。

マルチプル・コントラクションの意味を簡単に説明すると

 ・マルチプル(倍率)・コントラクション(縮む)と訳せます。

 ・マルチプルはPE(PERを略してPEという)倍率のことで、PER=株価収益率のことです。

つまり、PERの低下が起きている、ということを表します。

PERは以下の数式で計算できます。

※PERは、株価がそのEPSの何倍になっているかをみることで、株価が割安か割高かを判定しようとする指標です。

PER=株価÷1株当たり利益(EPS)

 過去の経験則では、FRBが利上げを行う局面ではマルチプル・コントラクション(PERの数字が縮小する)が起こることが知られています。

これは言い換えると、こういった局面では投資家が(このくらいなら支払っても良い)と感じるPERの数字が下がる、ということです。

そのような場合、一般的にPERの高い場合が多いグロース株は苦戦することになります。

そして実際、それらのグロース株、とりわけIPOされてまだ若い株はそのような株価の動きになっています。いくつか例を挙げてみると、直近の高値から最安値までの下げ幅の例として、AI−84%、ZM−70%、MQ−60%、AFRM−48%などです。

今回、グロース株が崩れている理由として、じっちゃまは2点挙げていました。

①金利の先行きの不透明性

②株式の需給関係 です。

①金利の先行きの不透明性について、まずそもそも株価はどのようにして弾き出されるか、という話を先にした方がわかりやすいと思います。株式の理論的な価値を計算しようとするモデル(理論式)はいくつかありますが最も単純なものとして

株価=EPS÷r+p−g

     r=長期金利

     p=リスクプレミアム

(投資家の景気や市場の動きへの楽観度合いに左右される、楽観的なら下がり、不安が高まれば上がる)

     g=EPS成長率

上記のような式があります。今回は長期金利にのみフォーカスを当てます。

 長期金利は一般的に経済全体の成長率や趨勢的なインフレ率の予想により大きな影響を受けやすいと言われています。現在、米国の足下のインフレ率6.8%に対して米国債は1.6%前後で推移しています。これは改善著しい労働市場の賃金価格スパイラルや原油価格上昇が続くリスクの可能性がある反面、中長期で米国経済の成長が弱々しいものになる可能性も同時に示唆しています。

また、FRBは今年3回前後の利上げをし政策金利は1.00%になることが予想されています。足下の高インフレに対して米国の長期金利は低い水準で推移した場合、無造作な利上げは長短金利差ゼロの状況を招く(長期金利の低下に対して政策金利、つまり短期金利がズンズンと引き上がると長短金利差が縮小し、マイナスになるとその後、景気後退の前兆となる経験則がある)ことを意味するためこれは避けないといけません。そしてFRBがインフレ退治のためにアグレッシブに政策金利を引き上げられなくなった場合、景気が停滞し物価だけ高止まりするスタグフレーションの可能性も考慮しなければなりません。

ここまで長々と書きましたが、つまり今は金利の先行きが不安定な状況ということです。上の式の金利にどの値を使用するかで計算結果に大きくブレが生じます。つまり上の式は意味を為さなくなるのです。また、金利と株価はシーソーの関係です。つまり金利が上がると株価にとってはマイナス要因です。そしてPERの高い株、とりわけPERを算出できないような利益の出ていない赤字の会社にとってはこういう局面では貨幣の時間価値(お金の価値は時間によって変わること)がエスカレートするため投資家はそのような銘柄からは資金を引き揚げられてしまうことにつながります。

②株式の需給関係については昨年IPOした企業は384社あり、そのうち初値より上の価格で取引されている銘柄は3割程度しかなく、主にIPO企業をプレーしている投資家、特に資金力の低い投資家は新しい企業がIPOされるたびに手持ちの銘柄を売っては買ってを繰り返しているような状態で結果、売りが集中して株価が下がる、という状態になっているとじっちゃまは解説されていました。このような状況下では一度、新株の供給をSTOPする、IPOのウィンドウが閉まる、状態になる必要があります。したがって、今後のIPOのディールの状況を中止する必要があります。

また、そのほかにじっちゃまが懸念されていることとして1月下旬から始まる2021年第4四半期決算シーズンのグロース株の決算の動向を挙げていました。具体的にはグロース株の多くはコロナ禍の恩恵を享受しており、今後、それらの追い風は得られないため、前年比較が厳しくなることを指摘されていました。