最高の睡眠をとる方法

 日本人の平均睡眠時間は6.5時間と言われています。これは先進国と比較すると、アメリカが7.5時間、フランスが8.7時間と、諸外国に比べて日本人の睡眠時間は短いことがわかります。また日本人のじつに40%もの人が睡眠時間が6時間未満です。「眠り」についての研究で世界最先端を走っているスタンフォード大学の西野精治教授の研究によると世界の都市を対象にした睡眠偏差値の研究で、東京が世界の都市の中で最低の睡眠偏差値であること、また眠りたい時間と実際の睡眠時間の差が諸外国に比べて大きいことが分かっています。今回は、睡眠について、その必要性や最高の睡眠をとるための方法について説明していきたいと思います。

どうして睡眠は必要か(私たちはなぜ眠るのか?)

 そもそもなぜ、私たちは眠るのでしょうか。1日のじつに3分の1を私たちは日々、睡眠に充てています。私たちの祖先(狩猟採集民族)の時代においても、今よりもリスクのある状況下でもまた同じように眠っていました。理由についてははっきりと分かっていない、というのが現状、世界の専門家達のコンセンサスです。しかし、いくつか分かっていることもあります。

私たちが睡眠をとる理由

①脳と身体に休息を与える

②記憶の整理と保存(短期記憶から長期記憶への移動が行われる=専門用語で固定化といわれる)

③脳内の老廃物の除去(脳脊髄液とともに老廃物が流され、脳卒中や認知症のリスクを下げる=健康の維持)

④免疫力を上げる

⑤ホルモンバランスの調整

⑥集中力・情緒の安定(1日6時間以下の睡眠が10日続くと、丸1日起きていたのと同等に集中力が低下、ストレスシステムの火災報知器的な役割である扁桃体が激しく反応する)

睡眠をとらないことによるデメリット

 次に、睡眠をとらないことで生じるデメリットについて説明をします。

①病気になる(死亡率が上がる)

 睡眠時間が6時間以下の人はそうでない人に比べて、がん6倍、脳卒中4倍、心筋梗塞3倍、高血圧2倍、糖尿病3倍、風邪5倍、のリスク上昇が見られます。また死亡率に関しては5.6倍高くなります。

②日中のパフォーマンスが低下する

 6時間睡眠を2週間続けると、丸2日徹夜したのと同程度の認知機能低下が見られます。睡眠を削ると、集中力、注意力、判断力、実行機能、即時記憶、作業記憶、数量的能力、数字能力、論理的推論能力、気分、感情など、ほぼすべての脳機能が低下します。つまり、睡眠不足だと本来の能力が半減したような状態で活動しているに等しいと言い換えることができます。

③太りやすくなる

 睡眠時間が少なくなるのに比例して、肥満リスクが上がります。具体的には、睡眠時間5〜6時間で1.2倍、4〜5時間で1.5倍、4時間以下で1.7倍となります。これは、睡眠不足によって、猛烈に食欲がUPするからです。具体的には食欲増進ホルモンであるグレリンが増え、食欲抑制ホルモンであるレプチンが減り、ショ糖、脂肪、ジャンクフードなどの摂取欲求がUPするからです。これは人体が睡眠不足によって、身体が危険だぞ、と感じることでカロリーを蓄えようとするからです。私たちの身体と脳は1万年前(狩猟採集民族)の時代から進化していません。当時の私たちの至上命題は「生き延びること、そして子孫を残すこと」の2点にフォーカスしていたからです。

最高の睡眠の定義

 最高の睡眠の定義とは一体、何なのでしょうか。そのカギははずばり、「量」と「質」です。以下、最高の睡眠に必要な「量」、「質」についてそれぞれ説明をしていきます。

・最高の「量」とは

 ベストな睡眠時間に関しては結論、6時間半〜7時間半がベストであると考えられています。カリフォルニア大学の研究で睡眠時間と死亡率についての研究で6時間半から7時間半の間が最も死亡率が低い、という結果が出ています。つまり7時間の質の良い眠り、が重要となってくるということです。では、次の質の良い眠り、について説明をしていきます。

・最高の「質」とは

 スタンフォード大学医学部教授、同大学睡眠生体リズム研究所所長の西野精治氏は著書『スタンフォード式最高の睡眠』の中で、睡眠の質は”眠り始めの90分”で決まる、と説明しています。私たちは入眠後、ノンレム睡眠、レム睡眠を明け方まで4〜5回繰り返し、明け方にかけてレム睡眠の時間が長くなっていき、浅くて長いレム睡眠の時に目覚めるというのが自然な睡眠の流れです。特に最初の90分のノンレム睡眠は全体で最も深く、ここをいかに深くするかが大切であると西野氏は説明しています。逆に最初の90分のノンレム睡眠を阻害されると、その後のスリープサイクルが正常に続いていかないということが分かっています。 

 ではなぜ、最初の90分が大切なのでしょうか。理由としては、最初のノンレム睡眠で①睡眠圧(眠気)が解消される②自律神経の調整③成長ホルモンの分泌④記憶の整理や定着が行われるからです。最初の90分はまさに睡眠にとってのゴールデンタイム、黄金の90分と呼ばれています。つまり眠りにおいては、「始めよければ全て良し」と言っても過言ではないのです。

最高の睡眠をとる方法

 ここまで、睡眠の必要性、睡眠不足のデメリット、最高の睡眠の定義について説明してきました。最後に、”最高の睡眠をとる方法”について説明をしていきます。

・まず手始めに、睡眠に”悪い習慣”を取り除く

①ブルーライト

 ブルーライトはスマートフォン、パソコン、蛍光灯などから発せられる光のことです。ブルーライトの波長は青空と同じ波長です。つまり、夜寝る前にスマートフォンなどを操作することで脳は「今は日中だ」と誤認し、睡眠に寄与するメラトニンという物質の分泌を抑えてしまいます。また再分泌を2〜3時間遅らせてしまうため、体内時計が2〜3時間ずれてしまいます。その他、ストレスホルモンであるコルチゾールの量を増やす(身体が目覚めてしまう)、グレリンの量も増えて前述のように食欲増進につながるといった悪循環につながります。

②寝る前の食事・飲酒

 寝る2時間前に食事をとり、高血糖状態で睡眠に入ると、成長ホルモンの分泌が抑制され、疲労回復ができなくなります。これは成長ホルモン自身、血糖を上げる効果があるため、高血糖状態では分泌が抑制されるためです。また、飲酒については少量であれば翌日のコンディションに影響が出ないという報告もあり、睡眠に寄与する神経伝達物質ギャバに影響を与えて寝付きを良くするという薬理効果もあります。しかし一方でトータルの睡眠時間を短縮させる、早朝覚醒を促すといった薬理効果もあり、基本的には睡眠には悪影響と考えられています。

③興奮系の娯楽

 興奮系の娯楽(ゲーム、映画・ドラマ、本など)はアドレナリンの分泌を促し、交感神経優位になり、眠りを妨げます。

・最高の睡眠をとる方法〜「体温」と「脳」のスイッチを切りかえる

 睡眠に悪い習慣を取り除いた上で、最高の睡眠をとる方法に移ります。ここでの鍵は、ずばり「体温」と「脳」のスイッチを切り替えることです。

「体温」のスイッチ〜”深部体温”と”皮膚温度”

 前述の西野精治氏は、スムーズな入眠に際して、深部体温と皮膚温度の温度差が縮まっていることが大切と説明しています。深部体温(身体の内部の体温は)日中は高く夜間低い、皮膚温度(手足の温度)は日中は低く、夜間は高い性質があります。

寝る90分前の入浴、室温・湿度の調整

 入眠時に深部体温と皮膚温度の差が縮まっているために、入浴が有効であると西野氏は説明しています。具体的に、深部体温には上がった分だけ下がろうとする性質があります。よって入浴によって深部体温を上げてあげることによって、入浴しない時に比べて深部体温は急降下で下がります。その時間が大体90分程度であるため、就寝前90分前の入浴が良いとされています。また深部体温を下げるのに、入浴後扇風機にあたる、寝る時に靴下を脱いで寝る(手足の熱放散を促す)、エアコン等での室温・湿度の調整といったことも有効です。

「脳」のスイッチ〜脳を”モノトナス”にする

 入眠に際して、脳をモノトナスな状態、つまり単調な状態にすることが重要です。具体的には脳に悪い習慣のところでも説明したように脳を興奮させるような娯楽は避け、リラックスできるような娯楽に置き換えることです。その際にできればストレッチ、音楽、瞑想など非視覚系(ブルーライトを遮断する)のものが望ましいです。

 

 

 

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